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    会計・経営リポート コラム

    【フーテンの寅から学ぶマーケティング】

    「わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します」。
    テンポの良いおなじみの名セリフを懐かしく思い出す方も多いでしょう。
    鞄ひとつで日本全国を気ままに旅する寅さんは、日本人が憧れる「小さな自由」を映画の中で具現しているのかもしれません。寅さんのあの自由さはどこからやって来るのか。「フーテン」とは仕事も学業もしないでブラブラしている人のことですが、寅さんは、実はたいした商売人だったのではないでしょうか。『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』にこんなシーンがありました。
    靴の会社で営業をしている甥っ子の満男が、仕事がつまらないと愚痴をこぼします。それを聞いた寅さんは、そのへんにあった鉛筆を満男に渡して「オレに売ってみな」と言うのです。満男はしぶしぶと「この鉛筆を買ってください」、「消しゴム付きですよ」と特長をアピールし寅さんにセールスしますが、「俺は字を書かないから鉛筆なんていらねえよ」とすげなく断られてしまいます。満男が「こんな鉛筆は売りようがない」とさじを投げると、寅さんは満男から鉛筆を取り上げて「この鉛筆を見るとな、おふくろのことを思い出してしょうがねぇんだ」と、鉛筆にまつわる話をしみじみと語り始めます。もちろん即興の作り話ですが、これが実にうまいのです。本当に懐かしそうに鉛筆を見ながら情感たっぷりにあの名調子で語ると、その場にいた家族全員が寅さんの話に心を奪われ、その鉛筆が欲しくなってしまうのでした。
    鉛筆を「モノ」として「機能的価値」、すなわち書いたり消したりしながら文字を紙に記録する機能を売ろうとした満男と、鉛筆の「情緒的価値」、すなわちそれを持ったり使ったりする事で得られる心理的価値を伝えた寅さん。つまり寅さんは、現代において物を売るという事は機能的価値より情緒的価値に重きを置くことの重要さを満男に実演して見せたのです。「どのような情緒的な価値を自社の商品やサービスに付け加えるか」今一度、見つめ直してみたいですね。

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